なぜ人は「面白い」と感じるの?意外性だけじゃない心理学的な理由

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はじめに 「おもしろい」って一体なんだろう

私たちは本を読んだり映画を観たり、友達と話したりする中で、「おもしろい」と感じる瞬間がたくさんあります。
大声で笑ったり、驚いたり、感動したり、心が満たされたり、様々な形で「おもしろさ」は私たちのもとを訪れます。
お笑い番組やゲーム、漫画、小説、美術作品に至るまで、世の中はたくさんの「おもしろい」にあふれています。

ところが「おもしろい」と感じるものは、人それぞれで異なります。
何をおもしろいと思うか。個人差はもちろん、同じ人であってもその時々によっておもしろいと感じる対象が変わることもあります。年齢や文化、時代や場所によっても「おもしろさ」の感覚は変化します。

物語や作品における「おもしろさ」とは、一体どのような基準や視点から評価されるのでしょうか。
この「おもしろさ」の正体や、私たちが対象を楽しむ上で無意識に使っている価値判断の軸について、様々な角度から探ってみましょう。

「おもしろい」と感じる瞬間 予想と感情の深い関係

私たちが何かを「おもしろい」と感じる時、その根底には常に「予想」という人間の営みが関わっています。意外な出来事に驚くことも、おなじみの展開に安心することも、どちらも私たちの「予想」が出発点となります。

例えば、漫才でボケとツッコミのやり取りがあったり、映画で思いがけない結末が待っていたりと、
意外性によって私たちの予想が裏切られる瞬間に感情は大きく揺さぶられ、それが「おもしろさ」につながるのです。
ミステリー小説のどんでん返しやサスペンスシーンでの予測不能な展開も、読者や観客が先の展開を予測しながらストーリーを追っているからこそ、その予測が裏切られたとき強い感情の動きが生まれます。

必ずしも予想を裏切られることだけが「おもしろさ」ではありません。
長く続くテレビシリーズや人気キャラクターの定番のように、予想通りの展開や親しみある要素によって安心感を得ることで、「おもしろい」と感じる場合があります。
その場合、「あるあるネタ」のように誰もが経験したことや知っていることを共有すること、予想通りの反応や感覚が確認されることが、「おもしろさ」を引き出す要素になります。

何かを「期待」すること、その期待が満たされて「安心」することが私たちに快感をもたらし、「面白さ」につながるのです。作り手は受け取り手に適度な予想をさせた上、その予測を部分的に裏切ったり満たしたりすることで、「おもしろい」という感情を巧みに引き出そうとします。

心が動く理由 ポジティブとネガティブの感情作用

「おもしろい」という感覚は、私たちの感情や心理的な反応と密接に結びついています。楽しい、嬉しい、快感といったポジティブな感情は、直接的に「おもしろい」という感覚につながるのです。物語に没頭して嫌なことを忘れたり達成感を得たりすることも、私たちの気分を高揚させ、作品への「おもしろさ」を感じさせる要因となります。

ポジティブな感情だけが「おもしろさ」に作用するわけではありません。悲しみ、恐怖、怒り、切なさといったネガティブな感情も、物語の展開や表現によっては「おもしろさ」という評価につながることがあります。

感動的なシーンで涙を流したり、怖い物語でドキドキしたり。こうしたネガティブな感情は、共感との相互作用によって、その効果が増幅されます。物語の登場人物に感情移入し、その人物の悲しみや苦しみに共感することで、読者や観客はより深く物語の世界に入り込み、強い印象を受けるのです。

ネガティブな感情には、「カタルシス」という心の浄化作用を伴うことがあります。悲劇的な物語を体験することで、観客は作品の中で怖れや憐れみといった感情を経験し、それが精神の浄化につながるのです。

特に「恐怖」という感情は、人間の生存欲求と結びついて私たちに強いドキドキ感を与えます。お化け屋敷のように作りものであると分かっていても怖さを体験しに行きたくなるのは、この恐怖による刺激を求めているからです。そして恐怖から解放された時、強い安心感が得られます。この恐怖と安心という感情の大きな落差も、「おもしろさ」を生み出す重要な要素となります。

知的好奇心と予測 物語の「謎」に隠された面白さ

人間には「知りたい」という強い知的欲求があります。この知的欲求が満たされた時に感じる快感も、「おもしろさ」の源泉の一つです。
新しい知識を知ることやこれまで考えたこともなかったようなユニークな考え方に触れることは、私たちにとって非常に興味深く、「おもしろい」と感じられます。

ミステリー作品が多くの人を惹きつけるのは、まさにこの知的欲求が鍵となっています。「なぜこれが起きたのだろう」「犯人は誰だろう」といった「謎」が提示されると、私たちはその答えを知りたいという強い欲求を感じ、先へ先へと読み進めます。ついに謎が解決された時に得られる快感は、知的欲求が満たされたことによる達成感や満足感と似ています。

知的欲求は、何かを広く探求しようとする「拡散的好奇心」と、特定の対象を深く理解しようとする「特殊的好奇心」に分けられます。
物語や作品においては、物語の世界や登場人物についてもっと知りたいという欲求や、提示された謎や伏線を理解したいという欲求が、「おもしろさ」への推進力となります。

知識や経験が豊富な人ほど、物語の中の細かなニュアンスや伏線に気づきやすく、それが回収された時の満足感はより強くなります。思った通りの人物が”犯人”であれば嬉しいものです。
作品の背景や文脈を知れば見え方が変わり、新たな「おもしろさ」を発見することもあります。

作品の評価軸 物語 アート ゲーム それぞれの「おもしろさ」の形

物語や作品の「おもしろさ」は、そのジャンルや形式によっても異なる評価軸で捉えられます。

物語や小説、映画などでは、ストーリー展開の意外性や共感できるキャラクター、テンポの良い語り口が「おもしろさ」につながります。作品の設定に矛盾がないか、時代考証がしっかりしているかといった点も作品世界への没入感や納得度に関わり、評価軸の一つです。

美術作品においては、単に視覚的な美しさだけでなく、作品に込められたコンセプトやメッセージ性が重視されます。
高度な技術で精密に描かれた作品も評価されますが、現代アートにおいては、発想のユニークさや社会への問いかけといった点が「おもしろい」(興味深い)と評価される傾向です。

作品が作られた時代背景や他の作品との関係性(文脈)を知ることで、作品の持つ意味や価値を深く理解できるようになります。美術鑑賞のレベルが高まるにつれて、個人的な好き嫌いだけでなく、技術や表現、スタイル、さらには独自の視点で見解を示すことができるようになっていくのです。

ゲームの「おもしろさ」は、プレイヤーに適切なレベルのチャレンジが設定されているか、自身の行動が結果にどう影響するかといった、インタラクティブな要素に大きく関わります。
ゲームをプレイするうち、作り手の意図やゲームバランスを理解することで、より高度な「おもしろさ」を感じられるようになります。
データ分析を通して多くのユーザーがどのような点に「おもしろさ」を感じているのか、あるいは感じていないのかを、定量的に把握しようとする試みも行われています。

「おもしろがる力」自分だけの価値基準を見つける

「おもしろさ」は対象自体に存在する性質であると同時に、受け取る側の主観や価値観によって大きく左右されます。何に「おもしろい」と感じるかは、個人の趣味嗜好や人生経験、そしてどのような価値観を大切にしているかによって異なります。

「おもしろがる力」とは、あらゆる物事の中に自分にとっての「おもしろさ」を発見し、それをエネルギーや行動力に変える力です。この力があれば、たとえ一般的には退屈だと思われるようなことでも自分なりの視点や工夫を見つけて、楽しむことができます。

自分にとって何が「おもしろい」のかを知ることは、自分自身の価値基準を見つける上で非常に重要です。他者の評価や流行に流されるのではなく、自分の心に正直に、何に心が動かされるのかを探求することで、自分だけの「おもしろさ」の軸を構築することができます。

価値観は固定的なものではなく、人生経験や様々な人との出会い、学びを通して変化し、成長していきます。新しい経験に対して心を開き、多様な考え方や文化に触れることは自分の価値観を広げ、「おもしろさ」を感じる幅を広げることにつながるのです。

もっと「おもしろさ」を見つけるために

物語や作品の「おもしろさ」をより深く味わい、また日常生活の中にもっと「おもしろさ」を見つけるために、いくつかのヒントがあります。

一つ目は、新しい経験に対して積極的になることです。これまで関心のなかったジャンルの作品に触れてみたり、普段行かない場所に行ってみたりすることで、予想外の「おもしろさ」に出会う可能性があります。

二つ目は、物事を様々な角度から見てみることです。一つの出来事や作品に対しても異なる視点から考えてみることで、見過ごしていた「おもしろさ」に気づくことがあります。他の人の意見を聞いてみたり、作品の背景を調べてみたりすることも有効です。

三つ目は、自分自身の感情や感覚に意識を向けることです。ある作品を読んで心がどう動いたか、何に興味を惹かれたか、どんな時に楽しいと感じたかなど自分の内面を観察することで、自分にとっての「おもしろさ」のヒントが見つかります。

そして最も大切なのは、何事も「おもしろそうかどうか」という視点で捉えてみることです。すぐに結果が出なくても、まずはやってみる、関わってみるという姿勢を持つことで、「おもしろさ」への扉が開かれます。

多様な要因が絡み合って「おもしろさ」は生まれる

 

物語や作品における「おもしろさ」は単一の基準ではなく、私たちの「予想」との関係性、感情や心理的な反応、知的欲求、作品の形式やジャンル、そして私たち自身の個人的な価値観など、様々な軸で評価される多層的な概念です。

意外性や共感といった基本的な要素から、知的な刺激、感情の揺れ動き、そして「面白がる力」といった個人の内面的なあり方に至るまで、多様な要因が絡み合って「おもしろさ」は生まれます。

自分にとっての「おもしろさ」の価値基準を理解し、様々な作品や出来事に対して心を開くことで、私たちはより豊かな「おもしろさ」を人生の中に見つけ出すことができるでしょう。あらゆる対象を楽しむことは私たち自身の感性や価値観を育み、人生をより豊かにしてくれる営みと言えます。

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