水越けいこ「Too far away」7分54秒の大作バラードが「究極のラブソング」と呼ばれる理由

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🎼 『Too far away』 が描く、遠く離れた星への願い

夜空を見上げて遥か遠い星の光に、愛する誰かの姿を重ねてしまうことがありますね。
その光は私たちから手の届かない距離にあるのに、不思議な力で心の最も深い場所に触れてくるものです。
水越けいこさんの『Too far away』という楽曲も、まさに遠くにあって、それでも確かにあると思える光のような存在かもしれません。

「Too far away」という言葉が示すのは、「遠すぎる」「遠く離れすぎて」いるという隔たりです。それは物理的な距離だけを指しているのでしょうか。あるいは、時間や生死によって二度と触れ合えなくなった、心の隔たりなのでしょうか。

この曲を初めて聴いた人が、涙が止まらなくなったという話は多く聞かれます。それは愛する人への一途でピュアな気持ち、たとえ遠くにいても「君だけいれば、生きる事さえ辛くない」と歌う切実なまでの想いが、聴く人に「偽りのない心の風景」を映し出すからです。

水越けいこさんの歌声は少しハスキーで透明感があり、聴き手の心にそっと語りかけるように響いてきます。彼女は「夜毎心は空を駆けてゆく」と歌い、私たちの心を暖かく包み込みます。

そして、「だけどかすかに光見えれば、それでいい」と歌う一節には、張り裂けそうな煌めく都会の孤独の中で、わずかな希望にすがって生きる人間の強さと、繊細な弱さが描かれているようです。

この楽曲は、愛する人を「君を風に変えて 空に飾りたい 僕は星になって 君を守りたい」と願う、壮大なスケールを持っています。この「心の奥底からのメロディ」は、一体どのようにして誕生し、なぜ今も私たちの感情を揺さぶり続けるのでしょうか。

さあ、稀代の名曲『Too far away』が持つ、愛の深淵を一緒に探ってみましょう。この記事はきっとあなたの心にも、遠くからの光を届けてくれるはずです。

📜 経済成長の陰で:偽りのない心の風景と大作バラードの秘密

『Too far away』が世に登場したのは、1979年8月1日です。水越けいこさんのサードアルバム『Aquarius(アクエリアス)』に収録された一曲として生まれました。
アルバムタイトルは、星占いにおける水越さんの生まれ星座であるみずがめ座(宝瓶宮)の英語名に由来すると見られています。

1970年代の終わりは、日本が高度経済成長の陰で人々の価値観が大きく変化し、音楽のジャンルもフォークやニューミュージックが中心となっていた時代です。
水越さんは1978年のソロデビュー(「しあわせをありがとう」)以前から、田中星児さんと共に出演したTBS系『8時の空』で歌のお姉さんとして親しまれており、全国的な認知度を持っていました。

この楽曲の作詞・作曲は、水越さんの初期の作品(「しあわせをありがとう」「ほほにキスして」など)の多くを手がけた伊藤薫さんです。伊藤さんは、後に「ラヴ・イズ・オーヴァー」で大ヒットを飛ばす、メロディセンスに優れたソングライターです。

楽曲の構造的な特徴は、その圧倒的な長さにあります。アルバムに収録されたオリジナル版は、7分54秒という、当時のポピュラー音楽としては非常に長い大作です。この長尺な曲を支えたのが、故・大村雅朗さんの繊細かつスケールの大きなアレンジです。大村さんのアレンジは、メロディーを最大限に活かし、聴く者を曲の世界観に深く引き込む力があったと評されています。

水越さんの歌唱は、技巧的な完璧さというよりも情感の深さに特化しています。その歌声はリスナーの感情への作用が驚異的であり、まるで歌の最後が涙声のように聴こえるほどの切実さを持っています。

歌詞の核となっているのは、冒頭のパートから繰り返される遠く離れた愛する人への純粋な想いです。

「君を風に変えて 空に飾りたい 僕は星になって 君を守りたい」

このフレーズは、愛する人がもはや手の届かない場所にいること、つまり死別や遠い別離を暗示していると解釈されます。それでも「君だけいれば、生きることさえ辛くない」と歌い、見えない糸で結ばれている約束を願う姿は、愛の存在を信じ続けようとする、静かなる抵抗の音を描き出しているのです。

アルバム『Aquarius』はオリコンチャートで最高17位を記録し、7万7千枚のセールスを上げました。水越さんがソングライターとしても才能を開花させたこのアルバムは、今でも初期の最高傑作の一つと見なされています。

この曲がシングルとしてリリースされたのは、アルバムから7年後の1986年5月1日でした。しかし、水越さんのオリジナルシングルとしては、チャート入りを果たすことはありませんでした。それでもこの楽曲が持つ「偽りのない心の風景」の力は衰えず、後に多くのビッグアーティストにカバーされることになったのです。

🎤 『Too far away』 を語る識者たち

この名曲『Too far away』が時代を超えて特別な光を放つのは、それを歌い、奏でた「達人たち」の言葉によって、その魅力が繰り返し証明されてきたからです。彼らの言葉はこの楽曲の持つ「静寂を破る感情の爆発」のような、計り知れない深みを教えてくれ流のです。

音楽ブログ「Music Avenue」のkaz-shinさんは、水越恵子さんのオリジナル歌唱について、その感情の深さを非常に具体的に評価しています。

「この『Too far away』という曲の水越の歌には圧倒される。感情のこもった素晴らしい歌唱である。歌の最後の方は、殆ど涙声のようにも聴こえるのだ。初めて聴いた時に鳥肌が立った事を憶えている」

水越 けいこ_AQUARIUS | Music Avenue
1979年リリースの水越 けいこの3rdアルバム。私の水越 けいこに対するイメージは、動と静なら静、季節で言うなら春から夏より秋から冬、色で言うなら...

彼はまた、この曲のアレンジを担当した大村雅朗さんの手腕についても言及しています。大村さんのアレンジが、7分を超える大作であるこの曲のメロディーを活かし、水越さんの歌が聴く者を引き込むという、「凄い曲」の完成度を導いたと述べています。

この曲は、水越さんご自身の人生と強く結びついています。水越さんは3歳で母を、中学2年で父を亡くし、1992年にダウン症の息子さん(麗良/れいら)を出産し、シングルマザーとして困難を乗り越えてきました。
彼女はかつて子育てのために必死だった時期や、苦しかったこと、頑張りすぎたことも含め、今、「乗り越えて良かった」と振り返っています。

聴き手は彼女の波乱万丈な人生と、愛する息子を懸命に育てる「静かなる抵抗の音」のような生き方を、楽曲の背景に重ねてしまいます。

この曲をカバーした大物アーティストの存在も、その価値を高めました。1988年に『Far away』としてカバーし、チャートにランクインさせた谷村新司さんです。
谷村さんの歌は「優しい声で」広く人々に知られるきっかけを作りましたが、kaz-shinさんは水越さんのオリジナル版と「比較になりません」とまで言い切っています。水越さんの表現力には、単に歌の上手さやヒットチャートの順位だけでは測れない、作品固有の情感の深さがあったのです。

音楽ブログ「Super源さんの音楽ブログ」の管理人は、この曲のメロディーやアレンジに対して、「素敵なメロディーに情感のある歌声、スケールが大きく、そして同時に繊細なアレンジに、聴くたびに胸がときめきます」と絶賛しています。

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さらに作詞・作曲家の伊藤薫さん自身も、水越さんの初期のヒット曲を数多く手がける中で、歌手活動からソングライターへと転身していきました。
伊藤さんと水越さんの出会いは「人の出逢いってとっても不思議」であり、きっと「必然」だったのだろうと、この楽曲について語るブログ記事では考察されています。

このように『Too far away』を巡る識者たちの評価は、水越さんがこの楽曲を通して表現した偽りのない心の風景が、聴き手の胸の奥が熱くなった瞬間を、今も鮮明に思い起こさせることを示しています。この歌は、愛と悲しみ、そしてそれらを乗り越える人間の強靭さを未来へ繋ぐ、重要なメッセージを内包しているのです。

✨ 『Too far away』 の魅力を最大化する演奏:聴き手が選んだ「感情の爆発」徹底比較

『Too far away』は、その情感の深さゆえに、多くのアーティストが「歌ってみたい」と願う楽曲となりました。ここでは、特に重要な3つの演奏に焦点を当て、それぞれの表現がどのように楽曲の魅力を引き出しているのかを比較分析します。

水越恵子(オリジナル版/1979年 アルバム『Aquarius』)

水越さんのオリジナル版は、1979年のアルバム『Aquarius』に収録されたバージョンであり、大村雅朗さんの緻密なアレンジが光ります。

この演奏の最大の魅力は、水越さんの「静寂を破る感情の爆発」のような歌唱力です。彼女の歌声は遠く離れた愛しい人へ切々と語りかけるようで、「愛への道は遠い」という現実と、それでも「かすかに光見えればそれでいい」と願う、強い希望が共存しています。
7分54秒という長尺な演奏時間の中で、聴き手は愛する人を星に見立てて守りたいという「心の奥底からのメロディ」に、深く没入することができるのです。

このオリジナル版こそが、曲の持つスケールの大きさ繊細さを最も高いレベルで両立させた唯一無二の演奏と広く認識されています。

谷村新司(カバー版/1988年 シングル『Far away』)

谷村新司さんは、1988年にタイトルを『Far away』に変更してこの曲をカバーし、ヒットさせました。谷村さんのバージョンは、ゆったりとしたバラード調で、水越さんの切実さよりも、大人の男性による優しく包み込むような雰囲気が強調されています。

このカバーは、水越さんのオリジナルシングルがチャート入りしなかった中で、オリコン最高69位を記録し、9週にわたってチャートに留まるという成功を収めました。谷村さんの歌声によってこの名曲がより幅広いリスナーに届けられたという点で、非常に大きな意味を持っています。
編曲は瀬尾一三さんが担当し、谷村さんの声質に合った、穏やかで心に染み渡るサウンドを作り上げています。

安倍なつみ(カバー版/2007年 シングル『Too far away 〜女のこころ〜』)

元モーニング娘。の安倍なつみさんが2007年にリリースしたカバーは、若い世代にこの名曲を再提示しました。このバージョンはオリジナル曲の持つ「遠い愛」のテーマを維持しつつ、歌詞が女性目線に一部書き換えられています。プロデューサーのつんく♂さんのもと、編曲は大久保薫さんが手がけ、現代的なJ-POPサウンドに仕上がっています。

安倍さんのカバーはオリコン週間ランキングで最高15位を記録し、数多いカバーソングの中で最高の順位を獲得しました。これは安倍さんの持つアイドルとしての訴求力と、現代の感性に合わせたアレンジが功を奏した結果と言えるでしょう。
歌詞が「恥ずかしいほど気持ちがゆれる」、より繊細で揺れ動く女性の心情を描写する形に変化したことで、新たな聴き手の共感を呼び起こしました。

それぞれの『Too far away』

水越さんのオリジナル版は「偽りのない心の風景」と「スケール感」で群を抜いており、谷村さんのバージョンは「優しさ」と「大衆性」で、安倍さんのバージョンは「現代的な切なさ」と「最高のチャート実績」で、それぞれが『Too far away』の持つ多面的な魅力を引き出しています。
しかしその根底には、伊藤薫さんが作り出した「遠い愛」への一途な想いという「心の奥底からのメロディ」が共通して流れているのです。

🔗 『Too far away』 が描き出した「静かなる抵抗の音」

『Too far away』の核心にあるのは、物理的な隔たりや時間の流れに抗い、愛する人との「見えない糸」を信じ続ける静かなる抵抗の音です。この「遠い愛」のテーマは、音楽以外の様々な芸術作品にも深く共鳴する情感を生み出しています。

水越さんの歌声が持つ「情感と揺らぎ」は、都会の喧騒の中での孤独や人生の苦難(経済成長の陰での社会的な焦燥や個人の苦悩)を背景に、愛だけを頼りにする純粋な心の風景を描き出します。

類似の感情を持つ楽曲:「東京が好き」(水越恵子)

水越恵子さんのアルバム『Aquarius』に収録されている「東京が好き」は、『Too far away』と共通する「煌めく都会の孤独」を歌っています。

この曲は、「冬の誘い冷たい風に あなたの手紙ちぎって飛ばした」別れと都会の情景が描かれます。そして、「東京が好き ひとり残されたって そんな東京が好き あなたはもういない」と、愛する人を失った場所である都会への愛憎入り混じる複雑な感情を吐露します。
これは『Too far away』の「君への道は far away」と表現される手の届かない存在に対する、諦めと執着の感情と共鳴し合っています。愛を失ってもその場所から離れられないという人間の精神的な依存が、都会の風景を通じて見事に描かれているのです。

「遠い」愛の系譜:『ラブ・イズ・オーヴァー』(欧陽菲菲、伊藤薫作)

『Too far away』と同じく伊藤薫さんが作詞・作曲を手掛けた「ラヴ・イズ・オーヴァー」(欧陽菲菲、1983年)も、愛の終焉という極限の状況を描いています。

「ラヴ・イズ・オーヴァー」が愛の終わりを突きつけ、決別する強さを歌うのに対し、『Too far away』は愛が終わっても、それを手放さない一途さ(「僕は星になって君を守りたい」)を表現しています。
伊藤薫さんの作品群は愛が持つ両極端の感情、すなわち「諦念と献身」という二つの「心の奥底からのメロディ」を、見事に描き分けていると言えるでしょう。
どちらの曲も聴き手に愛の真実を問いかける、詩的な表現に満ちています。

時間の隔たりが生む切なさ:『木綿のハンカチーフ』(太田裕美)

1975年にリリースされた太田裕美さんのヒット曲「木綿のハンカチーフ」は、遠距離恋愛がもたらす時間の隔たりと、それによる心の変化をテーマにしています。

都会に出て行った「僕」と故郷に残る「君」の心の距離が、いつしか物理的な距離以上に離れてしまうストーリーは、『Too far away』が表現する、物理的な遠さ(far away)を心の遠さとして感じている心情と深く繋がります。

『Too far away』の歌詞には、「だから言葉をひとつくれればそれでいい」という、愛を繋ぎ止めるためのささやかな要求が何度も繰り返されます。これは「木綿のハンカチーフ」の「涙拭く木綿のハンカチーフ」を願う純粋な彼女の想いと、その儚さにおいて強く共鳴し合っているのです。

これらの作品群は、『Too far away』の持つ「遠い愛」というテーマが一曲の感動に留まらず、日本のポピュラー音楽の中で繰り返し歌い継がれてきた、普遍的「静かなる抵抗の音」であることを証明しています。

🕊️ 『Too far away』 が届ける「静寂を破る感情」

水越けいこさんの『Too far away』は、リリースから長い年月が過ぎた今も色褪せることのない光を放っています。この曲は歌謡曲やニューミュージックというジャンルを超えて、「遠い愛」の象徴として、聴く人の心に深く根付いています。

愛する人を「星」に変えてまでその繋がりを信じようとする心の奥底からのメロディは、人間の根源的な愛の力を、静かに、しかし力強く訴えかけてきます。それは愛が遠く隔てられても、あるいは肉体が滅びても、なお精神的な結びつきを求め続ける「静寂を破る感情の爆発」を秘めているからです。

水越さんご自身がシングルマザーとしてダウン症の息子さんを育てるという大きな困難を乗り越えてきたという事実は、この楽曲の持つメッセージに、計り知れない重みを加えています。
彼女が苦しい時期も含めて「乗り越えて良かった」と語るように、この歌は聴く人それぞれが人生で直面する「Too far away」な試練を乗り越えるための、ささやかな「勇気をひとつ」優しく差し出してくれます。

水越さんのオリジナル版が持つ情感豊かな歌声と、大村雅朗さんが作り上げた繊細でスケール感のあるアレンジは、カバーされた様々なバージョンを経てもなお、「偽りのない心の風景」として人々の記憶に刻まれ続けています。

『Too far away』が持つ感動はこれからも世代を超えて、愛の遠さと、それを決して手放さない人間の強さを、温かい言葉とともに未来へと伝えていくに違いありません。
この歌は愛の存在証明であり、そして人生という旅路における、遠くからの道標なのです。

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