ジョン・レノンの傑作と音楽革命の裏側
ビートルズの名曲『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』、その魅力の全てをご存じですか? ジョン・レノンの個人的な思い出から生まれたこの曲が、いかにして世界を変える音楽革命の象徴となったのかを紐解きます。
この記事で音楽的背景から制作秘話、その普遍的なメッセージまで、一緒に探求していきましょう。
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」とは?:
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はビートルズを代表する楽曲の一つであり、そのサイケデリックなサウンドと幻想的な歌詞が特徴の超名曲として知られています。
実質的にはジョン・レノンが手掛けた楽曲ですが、レノン=マッカートニー名義で発表されました。この曲は1966年9月にジョン・レノンが、スペインで映画『ジョン・レノンの僕の戦争』の撮影中に書かれました。
曲のタイトルにもなっている「ストロベリー・フィールド」は、リヴァプール郊外にある救世軍が運営する戦争孤児院がモチーフとなっています。ジョンは幼少期、友人と共にこの孤児院の生い茂った庭園で遊び、夏に開かれる庭園パーティーを楽しみにしていました。伯母のミミによれば、ジョンは救世軍の楽隊の演奏を耳にすると、「ミミ!早く行こうよ、遅れちゃうよ」と叫んで飛び上がったそうです。
Let me take you down 君を連れて行ってもいいかい ‘Cause I’m going to strawberry fields 僕はストロベリーフィールズに行くところ Nothing is real 真実なんてそこには無いのさ And nothing to get hung about 何も気にすることはない Strawberry fields forever ストロベリー・フィールズよ永遠にLiving is easy with eyes closed 目を閉じて生きるのは簡単だ Misunderstanding all you see 見るものすべて、誤解を生むから It’s getting hard to be someone but it all works out それなりになるのは難しいけど、すべて上手くいく It doesn’t matter much to me まぁ僕には関係ないけどねLet me take you down 君を連れて行ってもいい? ‘Cause I’m going to strawberry fields ストロベリーフィールズに行くところ Nothing is real 真実なんてそこには無いのさ And nothing to get hung about 何も気にすることはない Strawberry fields forever ストロベリー・フィールズよ永遠にNo one I think is in my tree 僕の木には誰一人いない I mean, it must be high or low つまり、高かろう低かろうということだ That is, you can’t, you know, tune in but it’s all right 君は知っている、波長を合わせることはできないだろうけど But it’s all right でも大丈夫さ That is, I think it’s not too bad それは、そんなにも悪くはないからLet me take you down 君を連れて行ってもいいかい ‘Cause I’m going to strawberry fields 僕はストロベリーフィールズに行くところ Nothing is real 真実なんてそこには無いのさ And nothing to get hung about 何も気にすることはない Strawberry fields forever ストロベリー・フィールズよ永遠にAlways, no sometimes, think it’s me いつも、いや、ときどきだけど、それが僕だと思うんだ But you know I know when it’s a dream でも、夢だってこともわかってるんだ I think I know, I mean a… yes うん、わかってるつもりだ、つまり…そうだ But it’s all wrong でもそれはすべて間違っている That is, I think I disagree だから、僕は納得いかないんだLet me take you down 君を連れて行ってもいいかい ‘Cause I’m going to strawberry fields 僕はストロベリーフィールズに行くところ Nothing is real 真実なんてそこには無いのさ And nothing to get hung about 何も気にすることはない Strawberry fields forever ストロベリー・フィールズよ永遠に Strawberry fields forever ストロベリー・フィールズよ永遠に Strawberry fields forever ストロベリー・フィールズよ永遠に
この楽曲は1967年2月に、ポール・マッカートニー作の「ペニー・レイン」との両A面シングルとして発売されました。当時はアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録される予定でしたが、新しいシングル曲がなかったために急遽シングルとしてリリースされ、アルバムからは外されました。
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と「ペニー・レイン」は、幼少期の思い出に浸るという共通のテーマを持っています。これら二曲は「ビートルズ最強のシングル盤」とも呼ばれ、ビートルズサウンドの大きな飛躍を告げる新たな音楽の始まりと位置づけられています。
ココに注目!初めて聴く人のためのポイント
幻想的な雰囲気と独特の浮遊感:曲全体を包み込む夢のようなサウンドスケープは、聴く人をジョン・レノンの内面世界へと誘います。
ジョン・レノンの歌声の質感の変化:曲の途中でジョンの声質が変わる部分があり、それが曲の混乱したテーマと見事に調和しています。
メロトロンの神秘的な音色:フルートのような、しかしどこか非現実的な響きを持つメロトロンの音が、曲の幻想的な雰囲気を一層際立たせています。
なぜ「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」は愛されるのか?
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」は、音楽評論家やミュージシャンからも高く評価されています。オールミュージックは「ビートルズの最大の功績の一つで、レノン=マッカートニーの最高の楽曲の一つ」と評し、メロディ・メイカー誌は「舞い降りる深く神秘的な万華鏡のようなサウンド」と表現しました。
ローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」では第76位にランクインするなど、その革新性と普遍的な魅力は時代を超えて語り継がれています。
ジョン・レノン自身もこの曲を、「リアルな僕自身の世界を歌った曲」だと語っています。
ヘッドホンで細部の音に注目:この曲は緻密な音作りがされています。ヘッドホンで聴くことで、メロトロン、逆回転のシンバル音、チェロ、トランペットなど、様々な楽器の重なりやエフェクトをより鮮明に感じ取ることができます。
歌詞の意味を考えながら聴く:ジョン・レノンの幼少期の思い出や内面の葛藤が描かれた歌詞は、曲の理解を深める上で非常に重要です。和訳を参考に、彼の精神世界に思いを馳せてみましょう。
「不可能を可能にした」レコーディング秘話:二つの異なるテイクの奇跡的な融合
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のレコーディングは、ビートルズが1966年8月の最後の米国ツアーを終えて以来、バンドとして初の仕事となりました。1966年11月24日からEMIレコーディング・スタジオで始まり、実に5週間、45時間もの時間を費やして制作されました。制作当初のタイトルは「It’s Not Too Bad」でした。
制作過程で最も伝説的なエピソードの一つが、プロデューサーのジョージ・マーティンとレコーディングエンジニアのジェフ・エメリックによる「二つの異なるテイクの融合」です。
ココがすごい!奇跡の融合
ジョン・レノンは当初、アコースティック・ギターによる弾き語りで曲を披露しました。最初のテイク(Take 1、Take 7など)は、メロトロンを伴奏に用いたバンドサウンドで、比較的遅いテンポ、キーはB♭で録音されました。
しかし、ジョンは何か物足りなさを感じ、「もっとヘビーにしたい」と要望し、オーケストラを加えたテイク(Take 26など)が作られました。こちらはテンポが速く、キーはCでした。
数日後、ジョンはジェフ・エメリックとジョージ・マーティンに、この二つのテイクを繋ぎ合わせてほしいと要求しました。
ジョン・レノンの無茶な要望
当時、異なるキーとテンポのトラックを繋ぎ合わせるのは技術的に不可能だと思われていました。
しかし、ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックは、テープの再生速度を調整することでピッチ(音程)とテンポの両方を合わせるという驚異的な方法を発見しました。
具体的にはキーが低くテンポが遅い最初のテイクの速度を5%上げ、キーが高くテンポが速い後のテイクの速度を5%下げることで、ピッチとテンポが奇跡的に一致したのです。最終的に、リリース版ではTake 1(またはTake 7)の冒頭部分とTake 26(オーケストラバージョン)を組み合わせて完成させました。

この融合により、曲はまるで最初から計算されたアレンジであるかのように聞こえ、聴く者は12%も異なるテンポの違いに全く気づかないと言われています。
ジョージ・マーティンによる「音詩」
このレコーディング技術はビートルズがスタジオを単なる録音場所ではなく、一つの楽器として捉え、音楽表現の可能性を無限に広げたことを象徴しています。
深掘り:サイケデリック・ロックの幕開けと音楽的特徴
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」は、1960年代後半に流行したサイケデリック・ロックの代表作と位置づけられています。サイケデリック・ロックとは、LSDなどのドラッグによる幻覚をロックとして再現しようとした音楽を指し、その特徴は多岐にわたります。
ビートルズの音楽も1965年の『ラバー・ソウル』から始まり、1966年の『リボルバー』、1967年の『サージェント・ペパーズ』、さらに同年の『マジカル・ミステリー・ツアー』へと続く、サイケデリックな潮流に乗って展開してきました。
メロトロンの導入とその効果
この曲のサウンドを特徴づける重要な要素の一つが、メロトロンの導入です。メロトロンは当時として革命的な鍵盤楽器で、鍵盤を押すとフルート、ストリングス、コーラスなどの音を奏でるテープループが起動する仕組みでした。
1966年11月24日のセッションで、ムーディー・ブルースのキーボーディストであるマイク・ピンダーを通してスタジオに持ち込まれ、ポール・マッカートニーによって演奏されました。リリース版ではイントロからメインで使用され、その神秘的で浮遊感のある音色が曲の幻想的な雰囲気を決定づけています。
コード進行と実験的な音作り
この曲のコード進行はかなり独特で、調性が分かりにくいと言われています。Aメロでは「I Vm VI IV VI IV I」という進行で始まり、いきなり調性が曖昧になります。Bメロでは5度上のキーに転調し、いつの間にか元のキーに戻るという複雑な構造を持っています。
レコーディングではメロトロンの他に、シタールやチェロ、トランペット、逆回転のシンバル音など、多様な楽器や音響効果が効果的に使用されました。これらの実験的なアプローチが、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を唯一無二のサイケデリック・マスターピースにしているのです。
Q&A:愛好家も納得の深掘りポイント
Q1: なぜ「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はアルバム『サージェント・ペパーズ』に収録されなかったのですか?
A1: この曲は当初、『サージェント・ペパーズ』の初期テーマである「幼年時代」をモチーフとした楽曲の一つとして制作されていました。しかし当時のビートルズのレコード会社は新しいシングルが緊急に必要だったため、アルバムに収録される予定だったこの曲と「ペニー・レイン」を、両A面シングルとして急遽リリースしました。
もしアルバムに収録されていたら、『サージェント・ペパーズ』はまた違った印象の作品になっていたでしょう。
Q2: 曲の終わり方(アウトロ)はどのような意味を持っているのですか?
A2: 「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の終わりは、ドラムとフルートがごちゃ混ぜになり、電車の遮断機のような奇妙な音がすることから、「怖い」と感じる人もいます。
ジョン・レノンが自身の精神分裂や内面の「豊かで創造的な狂気」を表現しているという解釈や、単なる実験的な試みであるという見方もあります。
テープを切り刻んでランダムに繋ぎ合わせることでアウトロ(楽曲の終わりの部分)が作られたという説もあります。
その混沌とした雰囲気は、まるでタイムスリップしたり夢の中にいるような感覚を与え、聴く人を「ストロベリー・フィールズ」へと誘うような効果があります。
Q3: 「ポール死亡説」と関連する「クランベリーソース」とは何ですか?
A3: ビートルズのアウトロには、数々の都市伝説や陰謀論がつきまとっています。特に「ポール死亡説」は有名で、ファンが曲中の手がかりをもとに「ポールは死んでいて、そっくりさんと入れ替わっている」と主張しました。
この曲のアウトロでジョンが叫んでいるとされる言葉が「I buried Paul(俺がポールを埋葬した)」と聞こえるという説があり、これがポール死亡説を裏付けるものとされました。しかし実際は、ジョン・レノンはジョークとして「クランベリーソース」と言っていたとされています。
これはファンが歌詞に意味を見出そうとすることにジョン自身が驚き、意味のない言葉を書き始めたエピソードと重なります。
プロモーション・フィルムが示したビートルズの「新しい顔」
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」は、音楽だけでなく視覚表現においても革新をもたらしました。ビートルズは1965年以降、イギリスのテレビ番組に直接出演して演奏することを避け、プロモーション・フィルムを制作して各テレビ局に配布していました。
この曲のプロモーション・フィルムは、1967年1月30日と31日にケント州セブンノークスのノール・パークで撮影されました。このフィルムの監督はスウェーデンのテレビディレクター、ピーター・ゴールドマンが務め、ビートルズの主演映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』からインスピレーションを得たと言われています。
ビジュアル面での革新
演奏シーンのないPV:これまでのプロモーション・フィルムにあった演奏シーンが一切なく、イメージシーンのみで構成された世界初のPVでした。
実験的な映像技術:ストップモーションアニメーションや逆再生などの映像技術が使用され、曲のサイケデリックな雰囲気を視覚的に表現しました。
メンバーの変貌:メンバー4人が髭をたくわえ、ジョン・レノンは丸眼鏡をかけて登場しました。ビートルズのプロモーション・フィルムとしては初めてのことで、彼らの「新しいイメージ」を提示しています。
このプロモーション・フィルムは単なる楽曲の宣伝に留まらず、前衛的なパフォーマンスアートのスタイルを生み出しています。ビートルズが音楽だけでなく、映像においても時代の最先端を行くアーティストであることを証明しました。
聴くべき名盤・おすすめの音源
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はその複雑な制作背景から、様々なバージョンが存在し、それぞれ異なる魅力を放っています。この名曲を深く味わうためのおすすめ音源を3つご紹介します。
『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (50周年記念スーパー・デラックス・エディション)』
特徴: 2017年に発売されたこの豪華エディションにはリリース版の他に、Take 1、Take 4、Take 7、Take 26、そして2015年最新ステレオ・ミックスなど、膨大な数のアウトテイクと初期テイクが収録されています。この歴史的な楽曲がどのようにして生み出されたのか、その創作過程を時系列で追体験することができます。
聴きどころ: キーやテンポが異なる二つのテイクが、どのように編集され一つの楽曲に統合されたのかを、自身の耳で比較しながら聴くことができます。奇跡の融合が実現するまでの試行錯誤を肌で感じられるでしょう。
『The Beatles 1967-1970』(通称:青盤)
特徴: 1973年に発表されたこのベストアルバムは、ビートルズのキャリア後期の代表曲28曲を網羅しています。2009年デジタル・リマスター音源や2023年リミックス版もリリースされており、高品質なサウンドで「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を楽しむことができます。
ビートルズとの出会いがこのアルバムだったという人も多く、彼らの「青の時代」の奇跡の進化を感じられる一枚です。
聴きどころ: 数多くのヒット曲が並ぶ中で、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が放つ異質な輝きと、その後のビートルズの音楽性の変化を総合的に捉えることができます。
『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』
特徴: ビートルズの未発表音源やデモ、セッション音源が多数収録されたコンピレーションアルバムです。このアルバムには、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のコーラスがカットされたTake 1が収録されています。リリース版とは異なる、初期のよりシンプルでバンドサウンドに重点を置いたバージョンを聴くことができます。
聴きどころ: 曲が完成に至る前の原型や、メンバー4人による純粋なバンド演奏の魅力を発見できます。ジョンのデモテープから始まった「骨格だけの」曲が、いかにスタジオワークで肉付けされていったかを想像しながら聴くと、また新たな感動が生まれるでしょう。
時代を超えて輝く「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の魅力
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はジョン・レノンの個人的な記憶と内面世界が、ビートルズの革新的なスタジオワーク、そしてジョージ・マーティンとジェフ・エメリックの「不可能を可能にする」プロデュース技術と見事に融合した、音楽史に残る金字塔です。
サイケデリック・ロックの幕開けを告げたこの曲は、その複雑なコード進行、メロトロンの神秘的な音色、視覚的な魅力を加えたプロモーション・フィルムによって、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。
この記事を通じてあなたが「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の奥深い魅力と、その制作にまつわる驚くべきエピソードを再発見できたなら幸いです。
音楽は聴くたびに新たな発見があるものです。ぜひ、今回ご紹介した様々な視点や音源を通して、あなた自身の「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の楽しみ方を見つけ、その魔法のような世界を深く探求し続けてください!
コメント