豪華キャストとユニークな設定で話題を呼んだ映画『一度死んでみた』をご存知ですか? 「大嫌いな父親が、もし2日間だけ死んだら…?」という奇想天外なプロットを軸に、広瀬すず、吉沢亮、堤真一といった実力派俳優たちがドタバタ劇を繰り広げる、まさに“S・F”(死んだ・ふり)コメディの傑作です。
今回はこのハートウォーミングな作品の魅力と見どころを徹底解説します!映画のユニークな設定、豪華なキャストの魅力、そしてCMクリエイターならではの制作背景に迫り、まだ観たことのない方はもちろん、すでにご覧の方ももう一度観てみたくなるような情報をお届けします。
『一度死んでみた』とは?ユニークな設定と物語の魅力
2020年3月20日に公開された『一度死んでみた』は、見る人を惹きつける斬新な設定と、その中で描かれる普遍的なテーマが魅力の作品です。
「2日間だけ死んじゃう薬」を巡る、ドタバタハートフルコメディ
本作の物語は、父親のことが大嫌いな反抗期の女子大生・七瀬(広瀬すず)が、売れないデスメタルバンドのボーカルとして「一度死んでくれ!」とライブでシャウトする日々を送るところから始まります。しかしある日、本当に父親の計(堤真一)が死んでしまったという知らせが届きます。
実は計は、自身が経営する製薬会社で偶然発明された「2日間だけ死んじゃう薬」(通称「ジュリエット」)を飲んで仮死状態になっていたのです。これは会社の乗っ取りを企むライバル企業の陰謀から、社内に潜むスパイを炙り出すための計の秘策でした。ところがライバル会社の画策により、計は仮死状態から生き返る前に本当に火葬されてしまいそうになります。
大嫌いだったはずの父親の絶体絶命のピンチに直面した七瀬は、存在感が薄すぎて「ゴースト」と呼ばれている計の部下・松岡(吉沢亮)とともに、父親を救うために立ち上がります。火葬までのタイムリミットは2日間。七瀬は果たして父親を無事に生き返らせることができるのでしょうか?
本作はサイエンス・フィクションの「SF」と、「死んだ・ふり」を掛け合わせた「S・F(死んだ・ふり)コメディ」と称されており、脚本家の澤本嘉光は、藤子・F・不二雄の「少し不思議(SF)」という概念に影響を受け、作品にもその「少し不思議」な世界観を織り交ぜています。この奇抜な設定が、笑いと感動のハートフルな家族の物語へと昇華されています。
豪華キャストが織りなす「無駄遣い」の妙技
『一度死んでみた』の大きな見どころは、その豪華すぎるキャスト陣です。
主演の広瀬すずは、本作で初のコメディ映画に挑戦。ピンクに染めた髪とハードなデスメタルファッションに身を包み、これまでの清純なイメージを覆す、反抗期こじらせ女子・七瀬を熱演しています。ライブでのシャウトや父親への暴言を吐く姿は、女優としての新たな一面を見せています。
七瀬の父親・計を演じるのは、コメディセンス抜群の堤真一。変人研究者の社長という役柄で、変顔やボケを連発し、安定した面白さを提供しています。
そして、存在感が薄く「ゴースト」と呼ばれる社員・松岡役には吉沢亮。国宝級イケメンと称される彼が、メガネと前髪で顔を隠し、まさに「存在感ゼロ」のキャラクターを見事に演じ分けています。広瀬すずとは連続テレビ小説「なつぞら」でも共演しており、息の合った掛け合いが見どころです。吉沢亮自身も、松岡のような「ザコキャラ」の方が性に合うと語っています。
さらに本作は、カメオ出演の豪華さが際立っています。リリー・フランキー、小澤征悦、嶋田久作、木村多江、松田翔太、加藤諒、でんでん、柄本時生、前野朋哉、清水伸、西野七瀬、城田優、原日出子、真壁刀義、本間朋晃、野口聡一(JAXA宇宙飛行士)、佐藤健、池田エライザ、志尊淳、古田新太、大友康平、竹中直人、妻夫木聡など、主役級の俳優たちが短い出番ながらも強烈な印象を残しています。監督や脚本家が、これまで仕事をしてきた俳優陣を「無駄遣い」とも言える贅沢な形で起用しており、観客は次に誰が出てくるのかを期待しながら楽しむことができます。
CMクリエイターが手掛ける映画の「魂」
本作は、CM業界のトップクリエイターたちが映画制作に挑戦したことでも注目を集めました。
テンポの良いCM的手法と普遍的なメッセージ
監督はauの「三太郎」シリーズなどを手掛けるCMディレクターの浜崎慎治、脚本はソフトバンク「白戸家」シリーズなどを手掛けるCMプランナーの澤本嘉光が担当しています。浜崎監督にとって本作が長編映画初監督作品であり、澤本はこれまでに『犬と私の10の約束』や『ジャッジ!』などの映画脚本も手掛けています。
CM制作で培われたスキルは、映画にも大いに活かされています。澤本は、CMの制作課題である「予算」「起用タレント」「決まったメッセージを伝える」という3つの制約が、実は映画制作の課題と同じだと振り返りました。コピーライターとしての経験が「メッセージを伝える手段」としてのCM、そして映画へと繋がっているとも述べています。浜崎監督も、CMと映画の大きな違いである「尺」の課題を、CMと同じようにシーンごとのテーマを決めてテンポ感を調整することで解決したと語っており、澤本との共通認識が制作をスムーズにしたと振り返っています。
その結果、本作はテンポの良い会話劇と、随所に散りばめられたギャグ要素が特徴です。観客が思わず笑ってしまうような仕掛けが随所にあり、細かい伏線が後半で鮮やかに回収される爽快感も楽しめます。
単なるコメディにとどまらず、本作が伝える普遍的なメッセージも深く観客の心に響きます。その一つは「一度死んでみなきゃ、気が付けないこともある」というもの。七瀬と計の親子関係を通して、「言葉にしなければ伝わらない大切な思い」や「失って初めて気づくもの」が描かれています。
音楽を人気音楽クリエイターのヒャダインが担当し、広瀬すず演じる七瀬がボーカルを務めるデスメタルバンド「魂ズ」の楽曲を手掛けました。ヒャダインは、デスメタルでありながらポップな要素も取り入れた楽曲「一度死んでみた」や、ストーリーに深く関わるバラード「水兵リーベは僕の船デス」を制作し、広瀬すずの歌唱力も高く評価されています。
関連作品としては、映画の脚本をもとにした小説版(幻冬舎文庫、角川つばさ文庫)と漫画版(LINEマンガ連載、LINEコミックス)も公開されています。映画の世界観をより深く楽しむための選択肢となっています。
奇想天外なエンターテイメント作品
映画『一度死んでみた』は奇想天外な設定とテンポの良いコメディ要素に加え、豪華俳優陣の「贅沢な無駄遣い」が随所に光る、唯一無二のエンターテイメント作品です。CMクリエイターならではの視点と、俳優たちの振り切った演技が融合し、笑いの中にも家族の絆や大切なメッセージが込められています。
上映時間は93分と気軽に楽しめる長さでありながら、観終わった後にはきっと温かい気持ちと爽快感が残るでしょう。まだこの作品を観ていない方も、ぜひ一度、この“S・F(死んだ・ふり)コメディ”の世界を体験してみてください。きっとあなたも「デス!」と叫びたくなるはずです!
©2020 松竹 フジテレビジョン
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