人生100年時代と言われる現代において、「年を重ねるごとに生きがいを見つけたい」「何か新しいことに挑戦したいけれど、もう遅いのではないか」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな悩みを抱えるあなたに、ぜひ知っていただきたい映画があります。それは、2012年に公開された映画「人生、いろどり」です。
この映画は、日本の小さな過疎の町で、70代の女性たちが立ち上げた「葉っぱビジネス」が大成功を収めた実話に基づいた感動の物語です。本記事では、「人生、いろどり」のあらすじや見どころ、そしてこの映画が私たちに教えてくれる人生を豊かにするヒントについて、詳しくご紹介します。
映画「人生、いろどり」とは? 過疎の町を救った“奇跡”の物語
映画「人生、いろどり」は、徳島県の山間部に位置する人口約2000人の小さな町、上勝町を舞台にした物語です。この町は人口の約48%が高齢者という、過疎化と高齢化が深刻な典型的な「限界集落」と呼ばれる地域でした。主要産業であるミカンの栽培が異常気象で壊滅的な打撃を受け、町の人々は未来への希望を見失っていました。
そんな厳しい状況の中、一人の若き農協職員・江田晴彦(平岡祐太)が、あるユニークなビジネスアイデアを提案します。それは豊かな自然の中で育つ山菜や季節の葉っぱ、道端の草などを日本料理に彩りを添える、「つまもの」として販売するという「葉っぱビジネス」でした。
当初、この突拍子もない提案に周囲は冷ややかな目を向けます。しかし、平均年齢70歳の幼なじみ3人、薫(吉行和子)、花恵(富司純子)、路子(中尾ミエ)が「やってみないとわからない」というシンプルな思いで、このビジネスに参加することを決意します。
彼女たちは、夫の猛反対や市場での厳しい評価など数々の困難に直面しながらも、持ち前の粘り強さとチャレンジ精神で試行錯誤を重ねます。そして、ついには年商2億6000万円を売り上げるビッグビジネスへと成長させ、上勝町に再び活気と希望をもたらすことに成功したのです。この成功は高齢・過疎化に悩む地域におけるビジネスモデルとして、日本中から注目を集めました。
なぜ「人生、いろどり」を見るべきなのか?ポイントとメッセージ
映画「人生、いろどり」は一つのサクセスストーリーに留まらない、私たちに多くの示唆を与えてくれる作品です。
高齢者の「生きがい」と「有用感」の重要性
映画の最大の魅力は、70代、80代の女性たちが生き生きと活躍する姿が描かれている点です。彼女たちは「自分で働いたお金で孫に何かを買ってあげられるのが嬉しい」と語り、働くこと、必要とされることの喜びを再発見します。
これは「有用感」という、人が社会の中で役立っていると感じることで得られる満足感が、いかに人生を輝かせるかを示しています。上勝町では葉っぱビジネスの成功から高齢者が元気になり、老人ホームが廃止されたというエピソードも、この「究極の福祉」の成果を物語っています。
どんな時でも「やってみないとわからない」チャレンジ精神
主人公の薫をはじめとする女性たちは、周囲の冷たい視線や「ゴミ」呼ばわりされる屈辱にもめげず、「やってみないとわからない」というシンプルな思いで挑戦を続けました。
この映画は「何歳になっても夢は追いかけられる」「何を始めるにも遅すぎることはない」という、力強いメッセージを私たちに投げかけます。困難に直面しても諦めずに努力することの大切さ、そしてその努力が新たな人生の扉を開く可能性を教えてくれます。
地域コミュニティと絆の力
映画では葉っぱビジネスを通して深まる女性たちの友情、そして家族や地域コミュニティの温かい絆が丁寧に描かれています。ビジネスの成功は個人の努力だけでなく、お互いに支え合い、協力し合う「仲間力」によってもたらされたことがわかります。
過疎化が進む町で、住民がやがて一体となって地域を再生していく姿は、現代社会において失われがちな人と人とのつながりの大切さを再認識させてくれます。
古き良き日本映画の「薫り」
一部のレビューでは、この映画が木下恵介監督作品や小津安二郎監督作品のような、往年の日本映画の良さを彷彿とさせると評されています。派手さはないものの、じんわりと心に染み渡るような、静かで温かい感動が持ち味です。
派手なストーリー展開が苦手な方や、じっくりと人間ドラマを味わいたい方には特におすすめです。
映画「人生、いろどり」のあらすじ(ネタバレなし)
徳島県の山深い町、上勝町は高齢化と過疎化の波にのまれ、活気を失っていました。基幹産業であるミカンが冷害で全滅し、住民たちは将来に希望を見いだせずにいました。
そんな中、農協職員の江田(平岡祐太)は居酒屋で目にした料理の「つまもの」にヒントを得て、町に自生する葉っぱや草を「つまもの」として売るビジネスを思いつきます。当初、江田の提案は誰からも理解されず、「葉っぱなんか売れるわけがない」と冷笑されます。
しかし薫(吉行和子)、花恵(富司純子)、路子(中尾ミエ)という平均年齢70歳の3人の幼なじみの女性たちが、「やってみよう」と江田に賛同します。薫は夫・輝雄(藤竜也)の猛反対に遭いながらも、初めて自分の意思を貫き、葉っぱビジネスに没頭していきます。
彼女たちは青果市場で仲買人・裕香(村川絵梨)に「ゴミ」と言い放たれるなど、厳しい現実に直面します。それでも3人は、花木農家の娘である路子の知識も借りて、料理との組み合わせや出荷方法を熱心に研究し、試行錯誤を重ねます。
季節を先取りした花木を育てるため、自らビニールハウスを建てるなど、情熱を注ぐ彼女たちの姿は、やがて町の人々にも影響を与え、かつての活気を取り戻していきます。葉っぱビジネスの成功は彼女たち自身の人生にも大きな変化をもたらし、年齢を重ねても生きがいを見出し、輝く女性たちの姿が描かれます。
しかし、順調に見えたビジネスに、存続を危うくする大事件が勃発。3人は再び試練を迎えることになります。果たして彼女たちはこの困難を乗り越え、葉っぱビジネス、そして自分たちの人生に彩りを与え続けることができるのでしょうか。
映画をより深く楽しむためのQ&A
映画「人生、いろどり」を見る前に、または見た後に抱くかもしれない疑問をQ&A形式で解消し、映画への理解を深めましょう。
Q1: 映画の舞台となった上勝町は、どのような場所ですか?
A: 上勝町は、徳島県中央やや南東寄りに位置する山間地です。四方を400m〜1,000m級の山々に囲まれ、日本の棚田百選に選ばれた樫原の棚田や、千年の森づくりをしている高丸山など、日本の原風景ともいえる豊かな自然に恵まれています。かつては高齢化率51.4%(2016年時点)で「限界集落」と呼ばれていましたが、「葉っぱビジネス」の成功により、高齢者が生き生きと活躍し、限界集落とはほど遠い存在となっています。

Q2: 「葉っぱビジネス」とは具体的にどのようなことをするのですか?
A: 「葉っぱビジネス」は、上勝町に自生する季節の葉や花、山菜などを、料理の「つまもの」(料理の彩りや飾りとして添えられるもの)として採集し、栽培、出荷、販売する事業です。映画のモデルとなった株式会社いろどりでは、高齢者がパソコンやタブレットを使って受発注管理を行うなど、IT技術も積極的に活用しています。
Q3: 映画のビジネスは本当に成功したのですか?現在の状況はどうですか?
A: はい、映画のモデルとなった「彩(いろどり)事業」は実際に大成功を収めています。元農協の営農指導員である横石知二さんが立ち上げた株式会社いろどりのサクセスストーリーがこの映画のモデルです。70~80代の女性たちが主戦力となり、売上高は2億6000万円を突破。現在では年商2億円以上を稼ぎ出し、全国の青果市場で80%ものシェアを占めるに至っています。高齢・過疎化のビジネスモデルとして、NTTドコモのCMにも取り上げられるなど、多くのメディアで注目されています。
Q4: 映画のロケ地は実際に行けますか?
A: 映画は全編上勝町でオールロケが行われました。町では「映画『人生、いろどり』ロケ地マップ」を公開しており、作中に登場する「月ヶ谷温泉月の宿」や「JA東とくしま上勝支所」「鹿子山集会所」などの場所を訪れることができます。また、徳島市中央卸売市場や徳島青果もロケ地となりました。映画に登場した「石本商店」は、ロケを機に飲食店として再生し、石本さん自身も故郷に戻って生活する決意をしたという、映画のような奇跡が現実でも起こった場所です。月ヶ谷温泉・月の宿では、宿泊も可能ですので、映画の世界観に浸りながら上勝町の自然とビジネスの足跡を体験してみてはいかがでしょうか。
映画を彩る主要なスタッフ・キャスト
「人生、いろどり」は、実力派のスタッフと豪華俳優陣によって、その感動的な物語が紡がれています。
監督:御法川修(みのりかわ おさむ)
本作の監督は、御法川修氏です。松田優作のドキュメンタリー映画『SOUL RED 松田優作』(2009年)や、『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』(2013年)、『泣き虫ピエロの結婚式』(2016年)など、数々の話題作を手掛けています。御法川監督は、作品にかける愛情がものすごく、一点集中型でピュアな方だと主演の平岡祐太も語っています。
脚本・プロデューサー:西口典子
本作の脚本とプロデューサーを務めたのは西口典子氏です。西口氏は、経済が不安定な現代において、「自分の足でどう生きるか?」をテーマに、若い世代にも見てほしいという思いから、幅広い世代に愛される原由子に主題歌をオファーしました。
主題歌:原由子「ヘヴン」
映画のエンディングを彩るのは、原由子さんの書き下ろし新曲「ヘヴン」です。この楽曲は、四季の彩りと人生、そして遠く離れていても心の中にある故郷への想いが込められています。西口プロデューサーは、「力を抜いて、前を向いて、ちょっとだけ上を向いて歩いてみませんか?」と背中を押してくれるような、優しくて爽やかな歌だと評しています。
音楽:水谷広実
映画の感動を深める音楽は、水谷広実氏が手掛けました。
主要キャスト
徳本薫 役:吉行和子
夫の猛反対に遭いながらも、初めて自分の意思を貫き、葉っぱビジネスに参加する主人公・薫を演じました。吉行さんの演技について、共演の平岡祐太は、ビニールハウスが燃えるシーンでの「悲しみを搾り出すような表現」は「心の奥底まで傷ついているのが伝わってくる。すごかった」と絶賛しています。
石本花恵 役:富司純子
薫と共に葉っぱビジネスを始める幼なじみの一人、花恵を演じました。NHK朝の連続テレビ小説「てっぱん」での演技も高く評価されています。
尾関路子 役:中尾ミエ
薫と花恵とともに葉っぱビジネスに挑戦する幼なじみで、都会から戻ってきた友達役を演じました。
江田晴彦 役:平岡祐太
葉っぱビジネスの発案者である農協職員・江田を演じました。モデルとなった横石知二氏に実際に会い、その「にこにこと本当に温かい」おばあちゃんたちを見守る顔と、「ビジネスマンとしての顔」を役作りのヒントにしたと語っています。
徳本輝雄 役:藤竜也
主人公・薫の夫役を演じました。うなぎの養殖に失敗し「うなぎ!生きろ!」と叫ぶシーンはアドリブだったと平岡祐太が明かしており、その男としての「格好良さ」と「優しさ」が魅力的だと評されています。
その他、市場の仲買人・石立裕香を村川絵梨、戸次重幸、キムラ緑子、大杉漣、佐々木すみ江、螢雪次朗といった実力派俳優たちが物語に深みを与えています。
人生を彩るヒントが詰まった感動の実話
映画「人生、いろどり」は、徳島県上勝町の高齢女性たちが、過疎化という厳しい現実の中で「葉っぱビジネス」を成功させた奇跡の実話を基にした感動の物語です。
この映画は、私たちに以下の重要なメッセージを伝えています。
- 年齢に関係なく、新しい挑戦はいつからでも始められる。
- 人に喜ばれ、必要とされること(有用感)が、人生の大きな生きがいになる。
- 困難に直面しても、仲間との協力と諦めない心が道を拓く。
作中で見せるベテラン俳優陣の味わい深い演技、特に主人公たちのひたむきな努力と人生の輝きは、観る人の心を温かくし、前向きな気持ちにさせてくれるでしょう。
エンドロールで流れる、タブレットを使いこなすおばあちゃんたちの実際の映像は、高齢者がテクノロジーを駆使して生き生きと働く現代的なビジネスモデルを視覚的に示し、私たちに大きな感動と希望を与えてくれます。
もしあなたが今の自分に満足できない、何か新しいことを始めたいけれど勇気が出ない、人生の後半をどう過ごせば良いか悩んでいると感じているのなら、ぜひ映画「人生、いろどり」をご覧ください。きっとあなたの人生に、新たな彩りを加えるヒントが見つかるはずです。
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