【感動必至】『明日を綴る写真館』:写真に宿る「音」と、佐野晶哉が学ぶ「人生の繋がり」

映画

映画『明日を綴る写真館』の全貌

あらすじ

映画『明日を綴る写真館』はさびれた写真館を舞台に、写真と人々の「想い残し」を巡る心温まるヒューマンドラマです。物語の主人公は二人、長年のキャリアを持つ無口なベテランカメラマン・鮫島武治と、東京で華々しく活躍する気鋭の若手カメラマン・五十嵐太一です。

太一は自分が優勝した写真コンテストで、鮫島が撮影した一枚の写真に心を深く揺さぶられます。彼の写真に「音が聞こえる」と感じ、自身の写真には何かが足りないと感じた太一は、その答えを求め、鮫島の写真館に弟子入りを志願します。

しかし、家族とのコミュニケーションすら避けてきた太一にとって、鮫島の仕事ぶりは驚きの連続でした。鮫島は写真館を訪れる客一人ひとりと丁寧に対話を重ね、カメラマンと被写体という関係を超えてまで深く関わっていきます。
客が抱える悩みや問題、心に残る「想い残し」のため必死に奔走する鮫島の姿に、太一は翻弄されながらも自分に足りないものに気づき始めます。同時に、鮫島とその家族にも、これまで目を背けてきた「想い残し」があることを知ります。

変わりゆく太一が、悔いのない未来のために踏み出した一歩。その先に続く思いもよらない奇跡に、観客は涙することになります。
人が誰しも抱える後悔や心残りといった「想い残し」をテーマに、それらをどうすれば晴らすことができるのか、そして人と人が繋がり、互いに影響し合いながら成長していく姿を、この映画は美しく優しい筆致で描いています。

監督紹介

本作の企画・監督・プロデュースを務めたのは、秋山純です。1963年兵庫県生まれで、元テレビ朝日の演出家・プロデューサーという経歴を持ちます。
2018年に独立し、映像制作会社JACOを設立して以来、映画や舞台の監督・プロデュース、アーティストのミュージックビデオや企業CMなど、多岐にわたる活動を展開しています。

秋山監督は2022年公開の映画『20歳のソウル』でメガホンを取り、第47回報知映画賞で作品賞・監督賞を含む5部門にノミネートされるなど、その手腕が高く評価されています。平泉成や佐野晶哉も『20歳のソウル』に出演しており、今作の共演は再タッグとなります。

秋山監督は、長年付き合いのある平泉成が「主役はしない」というポリシーを持っていることを知った上で、「いつか平泉成さんの主演作を作りたい」という念願を抱いていました。
平泉成が趣味で写真を撮っていることを知り、「写真館の親父さんの話はないかな」と探していたところ、あるた梨沙の原作漫画に出会い、本作の企画が生まれました。まさに平泉成の趣味が映画の着想源となったのです。

彼の演出スタイルは、現場を楽しくすることをモットーとし、俳優だけでなく若手スタッフにも自由にのびのびと仕事をさせることにあります。俳優に対しては深い信頼を寄せ、時に即興的な演技を引き出すことで、より深い人間的な感情を作品に映し出しています。
秋山監督は、現代社会に蔓延する悪意や息苦しさとは異なる、温かく優しい物語を世に送り出すことに情熱を注いでいます。

主要キャストと役柄

映画『明日を綴る写真館』は、日本映画界のベテランから次世代を担う若手まで、豪華なキャスト陣が集結し、それぞれの役柄に深みを与えています。

平泉成(鮫島武治役) 平泉成は1964年の映画デビュー以来、60年にも及ぶ俳優人生の中で数多くの作品に出演し、名バイプレイヤーとして国民に親しまれてきました。そんな彼が80歳にして初めて映画の主演を務めたのが、本作の鮫島武治役です。
鮫島はさびれた写真館を営む無口なベテランカメラマンで、平泉自身の趣味である写真撮影とも重なる役柄です。 平泉はオファーが来た際の喜びを、「台本を仏壇に飾り、親父とお袋に手を合わせた」と語るほどです。
彼は役作りをあえてせず、「観に来た方をがっかりさせないよう、芝居が下品にならないように心がけた」と述べています。
彼の演技は熟練の技と人間としての温かさがにじみ出ており、カメラを構える姿や被写体に向ける眼差しには、単なる職人を超えた情熱が感じられます。若手カメラマン・太一の演技に「胸がツーンと来た」と語るなど、共演者に対しても温かい眼差しを向けていました。
彼が映画で見せる一つ一つの表情や仕草は、観客に深い感動を与え、時間が止まったかのような感覚をもたらします。
2024年の第49回報知映画賞ではこの初主演作での活躍が評価され、「特別賞」を受賞しました。

佐野晶哉(五十嵐太一役) Aぇ! groupのメンバーとして、2024年5月15日にCDデビューを果たした注目の若手俳優、佐野晶哉が五十嵐太一を演じます。太一は、輝かしいキャリアを持つ気鋭の若手カメラマンですが、人とのコミュニケーションを避けてきた過去を持ちます。
鮫島の写真に感銘を受け弟子入りを志願し、鮫島の教えを通して自分に足りないものを見つけ、人間的にも成長していきます。
佐野はオファーを受ける約2ヶ月前に偶然カメラを購入していて、この作品を通して写真が「完全に趣味になった」と語っています。
平泉成に触発され、79歳のベテランが深夜にフィルムカメラの練習をするストイックな姿勢に衝撃を受け、自身も「80歳になっても芝居がしたい」と語るほど、多くの刺激を受けました。
平泉成から「豊かな感性があり、自然に立っていられる柔らかさがある」と高く評価され、佐藤浩市も「時代の浮遊感」が役と合致していたと評価します。
佐野の演技は、若さゆえの不安や情熱、そして成長していく様子を繊細に表現し、映画に新たなエネルギーを吹き込んでいます。

その他豪華キャスト 平泉成の初主演を祝福するかのように、映画界を代表する豪華俳優陣が脇を固めています。
ウェディングプランナーで太一の母・冴絵役に黒木瞳、鮫島の妻・桜役に市毛良枝、鮫島写真館を訪れる客・牧役に佐藤浩市、牧の妻・悦子役に吉瀬美智子、太一の父役に高橋克典、街のケーキ屋を営むパティシエ・杉田役に田中健、さらに美保純赤井英和など、ベテラン俳優たちが作品に深みと温かさを加えています。
嘉島陸田中洸希(SUPER★DRAGON)咲貴といった若手気鋭のキャストも、ベテラン勢との間で化学反応を起こし、物語を彩ります。咲貴は映画内でパティシエの景子を演じるとともに、主題歌「」も担当しています。

物語のテーマとメッセージ

『明日を綴る写真館』は、観客の心に深く響く複数のテーマとメッセージを織り交ぜています。

「想い残し」の解放

映画の根幹にあるのは「誰もが抱えている人生の“想い残し”」というテーマです。登場人物たちは、過去の出来事や人間関係の中で抱える後悔や心残りを持ち続けています。
写真館という場所は、単に写真を撮るだけでなく、そうした人々の心残りや後悔と真摯に向き合い、「私たちに出来ることは、まだある」というメッセージを伝えます。
太一と鮫島、彼らが関わる人々が、それぞれの「想い残し」にどう向き合い、乗り越えていくかが感動的に描かれています。

人と人との繋がりと世代間の交流

物語は無口なベテランカメラマンと、人間関係を避けてきた若手カメラマンという、年齢も価値観も異なる二人の交流を中心に展開します。彼らは互いに影響を与え合い、成長していきます。
鮫島が客と丁寧に心を通わせる姿は、太一に人との繋がりの大切さを教えます。世代を超えた師弟関係は技術指導にとどまらず、人生における大切な教訓と人間関係のあり方を再考させるものです。

写真の持つ力と瞬間の大切さ

写真というメディアは、一瞬を永遠に保存する力を持っています。鮫島の写真に「音が聞こえる」と太一が感じるように、単に被写体を写すだけでなく、その瞬間の感情や撮る人の心が写し出されることを描かれます。
太一が写真を通じて人々の表情を捉え、その瞬間の感情を永遠に残そうとすることは、彼自身が過去の思い出や今を生きることの大切さを再確認するプロセスでもあります。
この作品は日常の中で見過ごされがちな瞬間の価値、記憶と思い出がいかに人生を豊かにするかを教えてくれます。

自己成長と未来への希望

太一は、鮫島との出会いをきっかけに自己の内面と向き合い、写真家としての技術だけでなく、人間としても大きく成長します。
彼の変化は、誰もが抱える不安や葛藤を乗り越え、悔いのない未来のために一歩を踏み出す勇気を与えます。
物語は登場人物たちがそれぞれの「想い残し」を解消し、幸福な結末を迎えることで、観客に温かい感動と未来への希望を届けます。

『明日を綴る写真館』は、あるた梨沙による同名漫画を原作としています。漫画家であるあるた梨沙自身も、カメラマンとしての勤務経験があり、その経験が作品に活かされています。彼女は映画化の話に驚きと喜びを感じ、撮影現場を訪れた際には平泉成と佐野晶哉がキャラクターをイメージ通り、あるいはイメージ以上に表現していることに感動したとコメントしています。

ロケ地・岡崎市

映画の主なロケ地は、愛知県岡崎市です。主演の平泉成の出身地でもあり、映画全体に温かい「おかえり」ムードが漂う場所となりました。
岡崎市内では乙川(桜城橋周辺)、伊賀川(りぶら周辺)、山手フォトスタジオ、ララシャンスOKAZAKI迎賓館、sweets shop SHiN-ple、葵丘、画廊「是」、上地八幡宮、愛知学泉大学、永田や佛壇店岡崎総本店、クラシスホーム岡崎店、美合PA(上り)など、様々な場所が撮影に活用されました。

Nikonのフィルムカメラ

制作面ではNikonが全面協力し、映画に登場するカメラも全てNikon製です。
鮫島が使うのはNikonのフィルムカメラFM2(おそらくF3も登場)で、太一が使うのはNikonのミラーレスデジタルカメラZf(Z9も使用)。
フィルムとデジタルの対比は二人のカメラマンの世代や考え方の違いを象徴的に表しており、作品にリアルな質感を与えています。

平泉成はプロのカメラマン役を演じるにあたり、硬くなったフィルムカメラを自室に持ち帰り、夜中に必死に巻き取りやピント合わせの練習をして、プロの手つきを習得したそうです。彼の役者としてのストイックな姿勢を示しています。

撮影現場は秋山監督の「楽しく」のモットー通り、和気あいあいとした雰囲気に包まれていました。
キャストとスタッフの連携が密で、時には即興的な要素も取り入れられ、より深い演技が引き出されます。
天候の急変といった予期せぬハプニングにも柔軟に対応し、それが結果的に作品のクオリティ向上に繋がることもありました。
キャストが共に過ごす時間は彼らの絆を深め、その親密さが映画全体の温かい雰囲気に影響を与えています。

観客からの反響と評価

公開以来、多くの観客から感動的な体験を提供したという声が寄せられてました。「心温まる」「泣ける」「優しい気持ちになれる」といった感想が多く見られます。
観客は登場人物たちの葛藤や心の変化に共感し、家族や友人との絆をテーマにした部分で涙を流したという体験談が多数寄せられました。
映画が描く人間関係の深さは、多くの観客の心に響く要因となっています。

平泉成と佐野晶哉の世代を超えた交流や、互いに学び成長していく姿が高く評価され、「これからの人生に対する勇気をもらった」といった肯定的な意見も目立ちます。映画鑑賞後、多くの人が自分自身の生き方や人間関係を見直すきっかけになったそうです。
映像美やロケ地の都市風景も物語に深みを与え、観客の心を惹きつける要素として称賛されています。

一方で、一部の観客から物語のテンポや音楽(特に継続的に流れるピアノBGM)について、「間延びする」「単調に感じる」といった指摘や、「都合が良すぎる展開」「キャラクターの変化が急すぎる」といったストーリー構成に対する違和感が挙げられました。
若手俳優の演技力、特に佐野晶哉の演技については「下手すぎて白けた」といった厳しい意見や、「ベテラン俳優に助けられている」という見方も存在します。
美保純の役柄についても、外見と役の設定のギャップが気になったという声がありました。
カメラワークや映像の解像度、細部のリアリティ(例:犬の扱い、病人の描写)に関する批判も見られます。

総じて映画は、多くの観客に感動と温かさを届けた一方で、物語の展開や演出、一部の演技に対しては賛否両論が見られました。しかし、平泉成の初主演という話題性や、写真という身近なテーマが多くの人々の関心を引き、鑑賞後に様々な感情や考察を促す作品となったことは間違いありません。

主題歌「瞬」について

映画『明日を綴る写真館』の主題歌は、劇中でパティシエの杉田景子役も務めたSAKI(咲貴)が歌う「瞬(またたき)」です。この曲は2024年6月5日にデジタルリリースされました。

SAKIは10代の頃からギター演奏を軸に音楽活動を行うシンガーソングライターで、本作が彼女にとって本格的な音楽活動の始まりであり、初のリリースとなります。
この楽曲は、映画の撮影中にSAKI自身が感じた思いを綴ったものが元になっています。
主演の平泉成がカメラを通して見せる繊細な表情や、一瞬一瞬を大切に切り取る姿にインスピレーションを受け、「シャッターを切るみたいに、みんながゆっくりゆっくりまぶたを落としていくような、そんな一瞬が多くて、曲のタイトルを『瞬』と付けた」と語っています。

楽曲の作詞・作曲はSAKI自身が手掛け、プロデュースとアレンジはプロデューサー集団のlucaが担当しました。SAKIの柔らかな歌声を優しく包み込み、聴くものに大きな感動を与えるサウンドを作り出しています。
楽曲制作にあたっては、映画館という大きな空間で多くの人に届けることを意識し、力を抜く箇所や、ささやくように歌う表現が取り入れられました。
歌詞には忘れかけた記憶の香り、大切な人との繋がり、過去を包み込む優しさ、そして「今この瞬間を感じるだけで世界はただ素晴らしい」という感謝の気持ちが込められています。

ミュージックビデオの撮影は、映画のメインロケ地である愛知県岡崎市内で行われました。
SAKIは幼い頃から歌とお芝居の夢を抱き、多くの人に「二足の草鞋は無理だ」と言われながらも、その夢を諦めずに活動を続けてきました。
今回の映画出演と主題歌担当は、まさに彼女の長年の夢が「こんな形で実現する機会をいただけた」瞬間であり、言葉が現実になる「言霊ことだま」を信じる姿勢が反映されています。

写真と映画の未来

映画『明日を綴る写真館』は写真館をテーマにすることで、写真と映画という異なるメディアがどのように融合し、新たな表現の地平を拓くかを探求しています。

写真は特定の「瞬間」を切り取り、その時の感情や出来事を永遠に保存する力を持っています。一方、映画は時間をかけて物語を展開し、観客に深い感情を届けます。
本作ではこの二つの芸術形式が巧みに組み合わされ、観客はより豊かで多層的な体験をすることができます。
劇中で鮫島が撮影するシーンは、物語と密接に関連し、観客はその瞬間の美しさやキャラクターの内面を共に体験します。
写真は、キャラクターたちの成長や変化の道筋を示す手段としても機能しています。

この融合によって生まれた物語は、「記憶」や「思い出」の重要性を再認識させます。登場人物たちが写真を通じて過去や人との繋がりを振り返るように、私たちも自身の経験を重ね合わせ、作品のメッセージをより深く感じることができます。

デジタル技術の発展により、誰もが手軽に写真を撮り、共有できる現代において、この映画は写真の役割や価値を改めて問いかけます。個々の視点や物語が、映像作品として具現化される可能性も広がっています。
写真が持つ瞬間の力と映画の物語性が融合することで、観客は深い感動を得られるだけでなく、人生の様々な瞬間を大切にすること、そこから生まれる物語の豊かさを再認識するきっかけとなるでしょう。

『明日を綴る写真館』は写真を通して人々と繋がり、感情を表現することで、より深い理解や絆を育む役割を担い、観客により良い未来への希望を与える作品として位置づけられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました