日本のギャンブル事情 建前は『遊技』 本音は『利権』?パチンコからオンラインカジノまで徹底解説

未分類

日本に住んでいるとあちこちでパチンコ店を見かけますし、テレビやインターネットでは競馬や宝くじの広告をよく目にしますよね。これらは当たり前のように存在していますが、実は「ギャンブル」には法律で認められているものと、そうでないものがあります。

なぜ、あるギャンブルは許されて、別のギャンブルは許されないのでしょうか。そしてそこには、どんな「建前」と「本音」が隠されているのでしょうか。このブログ記事では、日本のギャンブルが持つ独特な仕組みやそれにまつわる社会的な課題について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

日本においてギャンブルは刑法によって原則禁止とされていますが、特定の法律に基づいて公的に認められている「合法ギャンブル」も存在します。これらの合法ギャンブルは、それぞれ異なる省庁によって管轄されています。一方でオンラインカジノは日本では完全に違法とされており、取り締まりの対象です。

日本のギャンブルとその管轄省庁

公営ギャンブル (公営競技・くじ)

公営ギャンブルは国や地方自治体が運営または管理しており、特別な法律によって合法化されています。その収益の一部は、国の財源や公共事業、社会福祉などに充てられる建前があります。

  • 競馬 (中央競馬・地方競馬)
    • 管轄省庁: 農林水産省
    • 法的根拠: 競馬法。
    • 概要: 日本中央競馬会(JRA)が主催する中央競馬と、地方自治体が主催する地方競馬があります。競馬は、軍馬育成の国策として馬券の発売が黙認され、発展してきました。
  • 競輪
    • 管轄省庁: 経済産業省 (JKA財団の役員に経産省OBが再就職する例が見られるため)。
    • 法的根拠: 自転車競技法。
    • 概要: 第二次世界大戦後の深刻な財源不足に悩む自治体財政の支援を名目に、1948年に「自転車競技法」が成立し、公営ギャンブルとしてスタートしました。
  • 競艇 (モーターボート競走)
    • 管轄省庁: 国土交通省
    • 法的根拠: モーターボート競走法。
  • オートレース
    • 管轄省庁: 経済産業省 (JKA財団の役員に経産省OBが再就職する例が見られるため)。
    • 法的根拠: 小型自動車競走法。
  • 宝くじ
    • 管轄省庁: 総務省
    • 法的根拠: 当せん金付証票法。
    • 概要: 収益は、地方財政法第32条の規定により、公園整備などの公共事業や、国際化施策から少子高齢化対策まで幅広い12の事業に充てられ、実質的にフリーハンドで使える貴重な財源となっています。東京都だけでも直近で約431億円の歳入がありました。
  • スポーツ振興くじ (toto, WINNERなど)
    • 法的根拠: スポーツ振興投票の実施等に関する法律 (サッカーくじ法)。
    • 概要: 収益は、選手や指導者の育成、グラウンドの芝生化、地域のスポーツ施設の整備など、日本のスポーツ振興のために活用されています。売上金から当選金や経費を除いた収益の2/3がスポーツ振興事業に助成され、1/3が国庫に納付されます。

パチンコ

パチンコは日本の刑法で禁止されている「賭博」ではなく、法律上は「遊技」と位置づけられています。

  • 管轄省庁: 都道府県公安委員会 (風営法に基づき)。
  • 法的根拠: 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (風営法)。
  • 仕組み: パチンコ店は「三店方式」という独自の換金システムを採用しており、客に直接現金を渡さず、特殊景品を景品交換所(古物商)が買い取り、それを景品問屋が回収してパチンコ店に卸すという形式をとることで、法律の抜け穴を巧みに利用しています。これにより、パチンコ店は形式上「客に現金を払ってはいない」ため、賭博には当たらないとされています。
  • 現状と課題: しかし、実質的には賭博であるという見方が強く、その合法性については長年議論されています。警察OBがパチンコ関連団体の幹部ポストを占める「天下り」も指摘されており、業界と規制当局の密接な関係が「暗黙の了解」を形成しているとの見方もあります。

オンラインカジノ

オンラインカジノは、海外で合法的に運営されているサイトであっても、日本国内からアクセスして賭博を行うことは日本の刑法で犯罪とされており、完全に違法です

  • 管轄省庁: 直接的な管轄省庁は存在せず、警察が厳正な取り締まりを推進しています。
  • 法的根拠: 日本の刑法における賭博罪や常習賭博罪。オンラインカジノを運営した場合は賭博場開帳図利罪が成立します。
  • 現状と課題: 多額の借金やギャンブル依存症の増加、日本資産の海外流出といった社会問題として問題視されており、若年層への急速な広がりも懸念されています。オンラインカジノは、「意図的に人間を依存症にデザインする仕組み」で運営されていることが元運営者の口から明かされており、「監視」「分類」「操作」という3つのポイントで利用者を依存症に誘導しています。

統合型リゾート (IR)

日本国内でカジノを含む統合型リゾート(IR)を整備する動きがあります。

  • 管轄省庁: 国土交通大臣 (IR区域整備計画の認定申請先として)。
  • 法的根拠: 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律 (IR推進法) およびIR実施法。
  • 現状: 現時点ではカジノは合法化されていませんが、計画が順調に進めば、2029年秋頃に国内初のIR施設が誕生する見込みです。IR施設内のカジノは、主に海外の富裕層をターゲットとした滞在型観光の実現を目指していますが、収益の大半がカジノから得られるとされており、その利益は賭博で負けた人のお金であるという批判もあります。オンラインカジノはIR法案とは別物であり、IR施設開業後もオンラインカジノが合法化されるわけではありません。

これらのギャンブルは、それぞれ異なる法的枠組みと監督体制の下に置かれています。特に公営ギャンブルとパチンコが「合法」または「黙認」されているのに対し、オンラインカジノは明確に「違法」とされている点が、日本のギャンブル政策の複雑さを示しています。

パチンコの不思議な立ち位置 遊技とギャンブルの境界線

皆さんもよくご存じのパチンコについて見ていきましょう。パチンコ店は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」、通称「風営法」によって「遊技場」とされており、ギャンブルではないという建前が取られています。パチンコは、あくまで「玉を打ち出して遊ぶゲーム」だという位置づけなのです。

しかし、実際には多くの人がパチンコで手に入れた「景品」をお金に換えています。この換金を合法的に行うために考案されたのが「三店方式」という独特のシステムです。

三店方式とは、簡単に言うと以下の3つのお店が協力し合う仕組みのことです。

  1. パチンコ店 利用者はパチンコ玉を打ち、出た玉を「特殊景品」に交換します。この特殊景品は、後でお金に換えられるものです。
  2. 景品交換所 パチンコ店のすぐ外にある、パチンコ店とは別の独立したお店です。利用者はここで特殊景品をお金に換えます。
  3. 景品問屋 パチンコ店と景品交換所の間に位置し、景品交換所から特殊景品を買い取り、それをパチンコ店に納品します。

このように、パチンコ店が直接お金を支払うわけではないため、「賭博(とばく)」つまりギャンブルではない、という建前が成り立っているのです。しかし、この仕組みは「限りなく黒に近いグレーゾーン」とされており、その違法性をごまかすための「目くらまし」だと指摘する声もあります。なぜこの方式が許されているのか、その背景には政治家や官僚との「利権」が絡んでいるのではないか、という見方さえあるのです。

オンラインカジノはなぜ違法なのか?国が認めるギャンブルとの違い

パチンコが「遊技」という建前で運営される一方で、インターネットを通じて海外のウェブサイトで遊ぶ「オンラインカジノ」は、日本では違法とされています。たとえオンラインカジノのサーバーが海外にあり、その国では合法的に運営されていても、日本国内から利用する行為は「賭博罪」や「常習賭博罪」にあたり、逮捕される可能性があります。有名人がオンラインカジノで検挙されたというニュースも報じられました。

では、なぜ競馬や競輪、競艇、オートレース、宝くじ、スポーツ振興くじ(totoやWINNERなど)といった「公営ギャンブル(こうえいギャンブル)」は合法なのでしょうか。

公営ギャンブルは、国や地方自治体、あるいは日本スポーツ振興センターのような特別な組織が法律に基づいて運営しています。これらのギャンブルから得られる収益は、スポーツ振興や青少年育成、教育、文化、自然環境の保全など、公共の利益のために使われることが目的とされています。国は「健全性が保たれる」という理屈で、これらのギャンブルを特別に容認しているのです。

しかし、オンラインカジノは海外の運営元であるため、日本の法律が直接及ばず、国による管理や監督ができません。これが、日本国内での利用が違法とされる大きな理由です。また、多くのオンラインカジノサイトでは、利用規約などに「日本国内の利用者は自己責任で利用するように」といった文言が記載されており、運営側が法的な問題を回避しようとしている実態も明らかになっています。

ギャンブル依存症という深刻な問題 若年層とオンラインギャンブル

ギャンブルは、一時的な娯楽として楽しむ人もいますが、一部の人にとっては深刻な「ギャンブル依存症」という病気につながる可能性があります。ギャンブル依存症は「ギャンブル障害」とも呼ばれる精神疾患の一つで、2017年の厚生労働省の発表では、国内に280万人もの患者がいるとされています。

特にオンラインカジノは、その特性上、依存症への進行が速いと指摘されています。

  • アクセスのしやすさ スマートフォンがあれば、場所や時間を選ばず、24時間いつでもどこでもプレイできてしまいます.
  • 高額な賭け金と射幸性 一度に大きな金額を賭けることができ、大金を得られる可能性があるため、負けていても「次こそは」と深みにはまりやすいゲーム性を持っています.
  • クレジットカード利用 日本の合法ギャンブルでは現金が基本ですが、オンラインカジノではクレジットカードが使えるため、手持ちがなくても際限なくお金を使ってしまう危険性があります.
  • 若年層への影響 若い男性は、仲間からの影響を受けやすく、競争心が強いため、オンラインスポーツ賭博のようなギャンブルにハマりやすい傾向があります.実際に、オンラインカジノの利用者では20代、30代の若年層が市場規模の大部分を占めており、借金経験がある割合も10代が最も高くなっています.

ギャンブル依存症になると、お金の問題だけでなく、仕事や家族関係にも大きな影響が出ることが少なくありません。調査によると、オンラインカジノがきっかけで借金をしたことがある人の割合は全体で46.2%に上り、特に10代では61.1%が借金経験があると回答しています。

「責任あるギャンブル」と日本の課題 建前と本音の狭間で

ギャンブル依存症の問題が社会的に認識される中で、「責任あるギャンブル(セーフティネット)」という考え方が広まってきました。これは、ギャンブルを行う側が、利用者が安全にギャンブルを楽しめるようにするための取り組みを指します。
例えば、日本ではギャンブル依存症対策基本法が施行され、内閣にギャンブル等依存症対策推進本部が設置されました。公営競技の運営者も、遅ればせながら「ギャンブル依存症対策」として相談窓口を設置したり、「適度に楽しみましょう」といった注意喚起を始めたりしています。

しかし専門家の中には、このような「責任あるギャンブル」の取り組みが、真の対策ではなく、業界の利益を守るための「やったふり対策」や「隠れ蓑」になっていると批判する声もあります。
なぜなら根本的な対策、例えばギャンブルとマイナンバーを紐づけて利用制限を厳格化するような措置は、ギャンブル人口の減少につながるため、業界はこれを避けようとするからです。

日本社会にはギャンブルを「悪」とする建前がある一方で、公営ギャンブルからの税収に国が依存しているという本音も存在します。この矛盾がギャンブル対策を複雑にし、根本的な解決を遅らせる要因となっているのです。

パチプロというもう一つの「現実」 生計を立てる人々の真実

パチンコ業界には「パチプロ(パチンコプロフェッショナル)」と呼ばれるパチンコやパチスロで生計を立てる人々が存在します。
彼らにとってパチンコは「遊技」や「娯楽」ではなく、徹底した計算と技術、論理に基づいて「必然的に勝つ」ための「仕事」です。彼らは「回る台(玉が出やすい台)」を見極めたり、「止め打ち(特定のタイミングで玉の打ち出しを止める)」などの技術を駆使したりします。

パチプロの数はパチンコ業界の規制強化や娯楽の多様化により減少傾向にありますが、中にはパチンコを「セーフティネット」、つまり社会生活になじめない人々の「生きる術」として捉えている人もいます。
彼らは一般的な会社勤めや肉体労働が困難な状況の中で、パチンコで生計を立てるという選択肢を見出したのです。
パチプロの中には、他者との人間関係が苦手だったり、健康上の問題を抱えていたりする人もおり、パチンコの時間が「自由」を与えてくれると感じているケースもあります。

しかしパチプロとして稼ぐことは、好きな台を打つ楽しみを奪い、長時間「打ちたくない台」を打ち続ける苦痛を伴うこともあります。
一般のパチンコ愛好家が「当たるかもしれない」と期待するような「オカルト」的な考え方とは異なり、パチプロは数字や確率といった「期待値」を重視します。

元パチプロで、現在は精神保健福祉士としてギャンブル依存症の支援に携わる竹岡さんの話からは、パチンコが単なるギャンブルとしてだけでなく、特定のコミュニティや文化、そして一部の人々にとっては生存のための場所として機能している側面も垣間見えます。
しかし同時に、社会問題としての依存症対策と、業界の存続という二重性が、日本のギャンブル事情の複雑さを物語っていると言えるでしょう。

まとめ

日本のギャンブル事情は、「遊技」という建前と「利権」や「社会貢献」という本音の間で、複雑なバランスを保っています。パチンコのような独自の進化を遂げた形態や、オンラインカジノのような新たな課題、そしてギャンブル依存症という深刻な問題が存在します。

ギャンブルは多くの人にとって娯楽である一方で、人生を狂わせる可能性も秘めています。日本のギャンブルが持つ多面的な側面を理解することは、健全な社会を築く上で非常に重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました